しみ治療
しみには種類があります。また、同じ種類のしみに対しても、治療方法がいくつかあります。治療方法は大きく分けると、トレチノインとハイドロキノンを自宅で塗る方法(トレチノイン療法――東大吉村先生、オバジのニューダーム)、照射するもの(レーザー、フォトセラピー)と、ビタミン剤やトランネキサムなど従来の方法に分かれます。きちんとしみの種類を診断した上で、患者様のニーズにあわせて、治療方法を選択する必要があります。
しみは皮膚にメラニンという粒子が増えることでできています。そのメラニンのある場所が浅いか(基底層という皮膚の細胞が分裂する層の上にあるか)、深いか(基底層の下か)が診断治療のひとつのポイントです。この深さの診断のためにUVカメラを用いて写真をとります。
原則的に肝斑と炎症後色素沈着は、レーザーやフォトセラピーなどの照射する治療方法は向いていません。特に肝斑についてはまだ分かっていないことも多く、治療については確実な方法がないのが現状です。
多くの施設でいろいろな治療法が試行錯誤されており、新しい機械も多種出てきています。その中で美夏クリニックでは、臨床効果が確かめられており、美容外科学会などできちんと評価されている治療法を選択しています。
 しみはメラノサイトが活発になると再発します。全く紫外線にあたらない生活は不可能なので、もともとしみは再発するものと考えていただく方が良いと思います。でもこすらない、紫外線を浴びないケアである程度再発を抑えることは可能です。是非治療中や治療後には、正しいスキンケアをしてくださいね。
しみの種類について
【日光色素斑(日光黒子)】
平らで盛り上がりのない褐色のしみで紫外線の刺激によることが多い。
照射するタイプの治療・・・レーザー照射(Qヤグ)は、効果の確実性がフォトセラピーに比べて高いのですが、シール(創傷被覆剤のアブソキュア)を7日間貼る必要があります。また炎症後色素沈着といって、半年くらい黒ずんだ色、元のしみより濃い茶色になって目立つことがあります。炎症後色素沈着が目立つ場合には、トレチノイン療法の併用をお勧めしています。フォトフェイシャルファーストは、治療後の痂皮が化粧で隠れる程度の薄いもので、炎症後色素沈着も軽く、日常生活を送る上で手入れがラクです。各種ある光治療器の中で、最も安全で最も効果的な治療器です。それでもしみの種類によっては、消えないしみもありますし、回数を重ねて薄くなるだけの場合もあります。
塗るタイプの治療・・・・・トレチノイン療法といって、トレチノインとハイドロキノンをご自宅で朝夕2回塗って漂白していくという方法です。トレチノインを塗っている部分が赤くなって剥けてくるため、化粧に工夫が必要なのが欠点です。比較的安価で、漂白する場所を限定しながら使えます。場合によってはトレチノイン療法で不足する分をレーザー照射するという使い方もできます。また、レーザー照射後の炎症後色素沈着を短期間で終わらせる為にも使えます。また、肝斑がある方の日光色素斑にレーザーを照射する場合、照射の前後に補助療法として(肝斑が悪くならないように)使うことも可能です。オバジのニューダームは効果が高く、個人差が少ない治療ですが、フルフェイスの治療ですので、赤くなり乾燥し剥けるのはお顔全体になります。

【脂漏性角化症】
表面がザラザラと盛り上がっているしみです。首などにでるいぼ状のもの、お顔や体の中の盛り上がっているビロード状のものなど。肌と同じ色のものから黒いものまで、色にはかなり差があります。ウイルスによるものではありませんし、悪性の腫瘍になることもありません。炭酸ガスレーザーで隆起している部分を削るのが最短の治療です。かさぶたが1〜2週間ほどは目立ちます。黒ごまを散らしたようだと仰った方もおいででした。また、一時期ですが炎症後色素沈着といって茶色の目立つ方がたまに(小さい物で1割くらい、4mmを越すものですと半分以上)おいでになります。心配な方や炎症後色素沈着が目立つ方は照射後イオン導入やハイドロキノンを併用なさるか、トレチノイン療法をなさるほうがよいと思います。なお、治療には紫外線の少ない時期をお勧めしています。

【肝斑】
 両頬に蝶の形に出ることが多いしみです。妊娠や更年期など女性ホルモンが変動する時期に発症することが多く、紫外線にあたることで増悪します。洗顔やお化粧で摩擦することで悪化している場合もよく拝見します。 時に悪くなり時に良くなりを繰り返します。まだ分かっていない部分があって、学会研究会などでも常に議論の対象となっています。レーザーに反応せず、返って悪くなることがあります。
 一般的に以前からなされてきた治療方法に、飲み薬のトランネキサム、塗り薬のハイドロキノン、ビタミンCのイオン導入の3者併用療法というのがあります。肝斑が完全に消えるまでの効果はありませんが、日常生活に及ぼす影響が低く、全般的に色白になり、皮膚のコンディションが上がります。
そのトランネキサム、ハイドロキノン、イオン導入を続けながら、1か月に1回程度Qヤグレーザーによるレーザーピーリングをお受けになると、表面のくすみが取れ、また表皮のピーリング効果で薬の浸透性が高まり、満足度が高くなります。
 フォトフェイシャルファーストでは、プレパレーションが必要ですが、薄くする効果が高まります。
肝斑に効果が高い方法は、トレチノインとハイドロキノンを強力に使っていくやり方です。東大の吉村先生のプロトコールによるトレチノイン療法とロスのオバジによるクリームプログラム(ニューダーム)があります。この方法はご自宅で薬剤を朝夕塗るやり方で、現在、肝斑には一番効果的です。トレチノインでメラニンを追い出し、ハイドロキノンでメラノサイトがメラニンを生成するのを抑える治療法で、赤くなったり、剥けてくるのが欠点です。また紫外線を浴びると悪化する場合がありますので、注意が必要です。なかなか完全に取れませんし、維持療法は必要です。

【雀卵斑(そばかす)】
両頬に薄い平らな褐色の色があるもので、先天的になりやすい人がいます。フォトフェイシャルファーストがよい適応です。フォトを照射した後で残ったものに、レーザーをあてるとよいと思います。再発率が高い。

【遅発性太田母斑様色素斑】
メラニンが真皮という皮膚の深い部分にあるしみです。やや黒ずんだ、または灰色がかった数ミリ程度のしみが、両側の頬にたくさんあります。Qスイッチレーザーの適応があります。ただ、効果が現れるのに時間がかかり、数回の照射が必要になります。また、肝斑との区別がつきにくい場合があります。

【炎症後色素沈着(真皮メラノサイトーシス】
ニキビや擦り傷などの跡です。手術やレーザー照射、深めのピーリングなど何か処置をした場合にも起こります。通常1年くらいで色が消える場合が多いです。炎症後色素沈着が起こった場合に、紫外線にあてないこと、触らないこと(摩擦の力が皮膚にかかると色は黒ずみ、色素沈着はさらにひどくなります)の2点は重要です。その上で、治療としてはハイドロキノンやビタミンCのイオン導入が最初の選択肢になります。早い時期に治療するのが重要です。オバジまたは吉村式のトレチノイン療法が最短の治療方法です。
アトピー性皮膚炎の炎症後色素沈着など、慢性の炎症を繰り返し、基底膜が壊れ、メラニンが真皮に落ちてしまったものについての治療方法は確立したものがありません。

治療に際してのご注意
皮膚は種々の治療をした後に、炎症後色素沈着といって、半年くらい赤みからやや黒ずんだ色が残ることがあります。紫外線を浴びたりこすって摩擦の力がかかったりすると、炎症後色素沈着は長引き、場合によっては取れないこともあります。皮膚をきれいに仕上げるために、日焼け止めをきちんと使って、紫外線を浴びないように気をつけてください。日焼け止めは紫外線吸収剤の入っているものはかぶれやすいので、紫外線が散乱するタイプのものを選んでください。また、1日に何回か丁寧にファンデーションの上からで結構ですので、塗り足すようにしてください。また、治療した部位に爪をたてたり、こすったり、引っ掻いたりして摩擦の力を加えないようにお願いします。赤くなる、腫れてくるなどの炎症がひどくなるようなことがあれば、受診なさるなどの注意が必要です。
炎症後色素沈着のリスクをへらし、きれいに仕上げるために、ビタミンCのイオン導入、ハイドロキノンの外用を一緒になさることをお勧めしています。炎症が落ち着いている必要があります。
レーザー照射後の炎症後色素沈着には、トレチノイン療法をお勧めしています。


治療方法と薬剤について
トラネキサム(内服薬)
トランサミンとかニコルダという名前で出されている飲み薬です。1日3〜6錠を通常3か月飲みます。メラノサイトがメラニンを生成する過程をブロックします。お顔全体が白くなるようにして、効いてきます。血栓症のリスクのある方にはお勧めしていません。

ハイドロキノン
塗る薬の中では漂白剤として現在最も効果があります。メラノサイトという細胞がメラニンを生成する過程を抑える薬です。さまざまな治療と並行して使用する薬で、治療効果を高めたり、治療中の炎症後色素沈着を抑えたり、他の副反応を減らしたり、しみの治療をする上で非常に重要な薬です。
この薬は、時にかぶれ(接触性皮膚炎)が起きます。使用する量により赤くなる、ヒリヒリする、痒くなるなど刺激症状が出る場合があります(刺激による接触性皮膚炎)。この場合は量を減らすか濃度を変えるなどの工夫で再度使用できます。また人により、わずかの量であってもかぶれる場合もあります(アレルギー性の接触性皮膚炎、頻度は少ない)。もし、このアレルギーによる接触皮膚炎の症状が出てしまうと、その方はハイドロキノンを使用することができなくなります。かぶれの症状が出た場合、症状の強さにもよりますが、どちらの接触性皮膚炎であったかパッチテストで確認します。
かぶれた場合には一時的にしみの色が強くなったり、周辺も含めて炎症後色素沈着が起きる場合があります。通常と異なる反応が出た場合にはなるべく早く診察においでください。かぶれのリスクはありますが、しみを抜くためには大変重要な薬です。ハイドロキノンは皮膚に載せるように(塗りこめない)薄く伸ばしてお使いください。最初は1日1回少量で結構です。ハイドロキノンは急に中止すると、色が突然戻ってくる場合があります。漸減した方が安全です。
美夏クリニックで用いているハイドロキノンは5種類です。
オバジのクリームプログラムで使用しているものは、やや刺激が強くハイドロキノンの含有率は5%です。
Gradesという製薬会社のものは4%で、比較的穏やかです。赤くならなければ1日2回使ってください。
トレチノイン療法(吉村)で用いているものは5%または10%で、乳酸が入っていてピーリング効果のあるもの(乳酸は刺激が強いので赤くなりやすい)と親水軟膏アスコルビン酸含有の穏やかなもの。どちらも吉村先生の処方によります。
化粧品に分類される1.9%の濃度のナノHQクリームは、最近のテクノロジーで濃度を下げながらも効果は4%くらいまであるというものです。

トレチノイン療法
種々の作用をもつ薬ですが、しみの治療においては、表皮内メラニンを排出する作用を利用して治療します。皮膚の基底層(細胞が分裂するところ)に働きかけ、新陳代謝を促し、細胞と一緒にしみの色を作っているメラニンを上へ上へと押し出してゆきます。通常でも皮膚の新陳代謝でメラニンは押し出されているのですが、押し出されるのと一緒にメラノサイトがメラニンを産生し、しみとして、定着してしまっています。しみの治療では、ハイドロキノンでメラニンの産生をおさえる必要があります。
新陳代謝を盛んにするため、塗っている場所が赤くなり、剥けてきます。これは通常の反応なのですが、かなり人によって程度に差があります。特にアトピ−性皮膚炎のように、もともと皮膚が乾燥し湿疹が出やすい人は、注意して使う必要があります。

イオン導入
いくら化粧品でビタミンを塗っても、私たちの皮膚にはバリアがありなかなか浸透しません。そこで皮膚に電圧をかけて、イオン化したビタミン(レチノ−ル、ビタミンCなど総合ビタミン入りのジェル)を皮膚の深い部分に導入します。
ビタミンCがメラノサイトの活動性を抑え、皮膚の治癒能力を促進します。肝斑はフォトセラピーやレーザー治療が難しいものですが、イオン導入ではおだやかに色をコントロールします(ハイドロキノンやトランネキサムの内服と併用することが勧められます)。また、レーザーやフォトセラピーの治療後に炎症後色素沈着を起こす確率を下げ、もし起きた場合にも早く改善します。つまり、他の治療と組み合わせた場合、安全性が高まり早い時期にゴールに到達することが期待できます。また、やけどや擦過傷(擦り傷)など傷を受けた後、早期にイオン導入を施行しますと、治癒が促進し、炎症後色素沈着が起きたとしても軽くてすみます。7〜10日に1回の割合で8〜10回を目安に続けますと効果がかなり表れますが、ご希望の回数でお受けいただけます。ジェルにかぶれてしまいますと、施行できません。

フォトフェイシャルファースト
 今年導入したルミナスワンのフォトフェイシャルファーストは、しみ治療に大変威力を発揮いたします。レーザーに近い感じで鋭く照射することも可能ですし、柔らかく少しずつ照射してゆくことも可能です。皮膚の状態やしみの種類、患者さんのご希望でどのような方にでも照射できます。
 肝斑にたいしては、色を薄くする効果が認められますが、消えるまでは望んではいけません。

 以前より使用していたパロマー社のメディラックスは、しみの治療には限界があります。肝斑のない患者さまで最初の2−3回の使用であれば効果が現れる方もおいでです。効かないしみがありますし、薄くなるだけのしみもあります。

 フォトによる治療は痂皮が化粧で隠れるくらいの薄いもので、炎症後色素沈着も軽いため、日常生活に及ぼす影響が少なくラクなことが特徴です。お顔全体にぱらぱら色が落ちているような方で、テープを貼るようなケアや、皮膚が赤くなったり剥けたりすることが日常生活上困難な方にはよい選択肢だと思います。

Qスイッチヤグレーザー
表在性色素斑、深在性色素斑(太田母斑、遅発性太田母斑様色素斑)、刺青などレーザー照射で効果のあるしみについては、すべてに対して効果があります。MAX社のスペクトラVRMという機械を使用しています。
皮膚の浅い部分(表皮)のメラニンにレーザーが当たりますと、メラニンがはじけとび、かさぶたを形成します。かさぶたがはがれるとしみが消失しています。
皮膚の真皮という深い部分のメラニンは波長を変えて照射します。はじけとんだメラニンが白血球に食われてしみの色が薄くなります。浅い部分に照射した場合に比べ、レーザーの効果が出てくるまで、場合によっては2〜3か月と時間がかかりますし、通常複数回の照射が必要になります。
ペンレステープという麻酔のテープを1時間半くらい前に貼っていただくと痛みが軽くなります。痛みに弱い方はあらかじめお申し出ください。
照射部位の痂皮をなるべく長くつけておいたほうが、仕上がりはきれいです。照射後に創傷被覆剤を貼付して、お帰りいただきます。その被覆剤(アブソキュア)を1週間貼ったまま、洗顔したりお化粧したりしてください。被覆剤の貼った周辺付近が赤くなってきたら、それは被覆剤にかぶれています。来院してください。痂皮が途中でとれたり、引っ掻いたりしますと、炎症後色素沈着が起きやすくなります。
痂皮が取れた後は、皮膚に赤みが1か月くらい残存します。紫外線を避けることが非常に重要です。かぶれないSPF40以上のサンスクリーンを最低半年お使いください。肌色のテープをお使いいただいても結構です。
炎症後色素沈着といって、レーザー照射後いったん色が消えても、黒ずんだ茶色い色が出る場合があります。程度にもよりますが、ハイドロキノンを塗る、イオン導入をする、トレチノイン療法をするなどをお勧めしています。来院をお願いします。
また、同じ機械をレーザーピーリングに用いることもできます。カーボンを塗って弱い出力でお顔全体に照射いたします。特に毛穴を引き締めたい場合には波長を長くして使います。ピーリング効果でハイドロキノンやイオン導入などの薬の浸透性が高まります。2〜3パス目で真皮を刺激し、若返りや美白効果も期待できます。1か月に1度くらいの繰り返しの照射で効果をあげるもので、若干赤みが出る場合がありますが、ダウンタイムのない治療です。

炭酸ガスレーザー
水がターゲットのレーザーです。皮膚表面より出っ張っている部分を削るのに用います。脂漏性角化症など短時間で平らにするには、良い機械です。炎症後色素沈着の目立つ人と全くおきない人がいます。紫外線を避けることが必要です。周辺部分に炎症後色素沈着を起こしにくいので、美容領域では液体窒素より炭酸ガスレーザーが好まれます。

オバジクリームプログラムnu-derm
トレチノインとハイドロキノンを用いて、皮膚を若返らせ、しみを治療します。皮膚表面から真皮までの統合的な治療で、6週間を1クールとし、3クールを基本に施行します。2クール目でTCAのような深いピーリングやレーザー照射を行いますと、炎症後色素沈着の可能性が極めて低く抑えられ、積極的な治療が可能です。ただ、皮膚が赤くなり剥けてきますので、我慢の時期が必要です。妊娠している方はできません。
お顔全体に種々のトラブルがある場合に良い選択肢になります。

>>Obagi Systemホームページ

トレチノイン療法(東大吉村式)
オバジと同様トレチノインとハイドロキノンを用いた漂白療法です。基底膜という表皮の細胞分裂が起こる層より浅い部分にあるしみに適応があります。トレチノインで基底膜の上にあるメラニンを追い出し、ハイドロキノンでメラノサイトの活動を抑えることで漂白します。特に、肝斑と炎症後色素沈着は照射するタイプの治療が向いておらず、トレチノイン療法が最も漂白効果のある治療法になっています。オバジが顔全体を治療するのに比べ、しみの部分のみを治療します。そのため、赤みや皮膚が剥けてくるのが一部分で済み、コンシーラーなどカバーリング効果の高い化粧品で、ある程度人目から隠すことができます。コストもオバジに比べ、安価で済みます。この治療をするときには、ハイドロキノンは東大式の処方のものを用いています。乳酸の入っているハイドロキノンは親水軟膏ベースのものに比べ刺激症状が強く出ますが、早くメラニンを追い出す効果があります。ハイドロキノンに対して、アレルギー性の接触性皮膚炎が出る人はできません。