■しみ治療
しみには種類があります。また、同じ種類のしみに対しても、治療方法がいくつかあります。治療方法は大きく分けると、トレチノインとハイドロキノンを自宅で塗る方法(トレチノイン療法——東大吉村先生、オバジのニューダーム)、照射するもの(レーザー、フォトセラピー)と、ビタミン剤やトランネキサムなど従来の方法に分かれます。きちんとしみの種類を診断した上で、患者様のニーズにあわせて、治療方法を選択する必要があります。
しみは皮膚にメラニンという粒子が増えることでできています。そのメラニンのある場所が浅いか(基底層という皮膚の細胞が分裂する層の上にあるか)、深いか(基底層の下か)が診断治療のひとつのポイントです。この深さの診断のためにUVカメラを用いて写真をとります。
原則的に肝斑と炎症後色素沈着は、レーザーやフォトセラピーなどの照射する治療方法は向いていません。特に肝斑についてはまだ分かっていないことも多く、治療については確実な方法がないのが現状です。
多くの施設でいろいろな治療法が試行錯誤されており、新しい機械も多種出てきています。その中で美夏クリニックでは、臨床効果が確かめられており、美容外科学会などできちんと評価されている治療法を選択しています。
 しみはメラノサイトが活発になると再発します。全く紫外線にあたらない生活は不可能なので、もともとしみは再発するものと考えていただく方が良いと思います。でもこすらない、紫外線を浴びないケアである程度再発を抑えることは可能です。是非治療中や治療後には、正しいスキンケアをしてくださいね。
■しみの種類について
【日光色素斑(日光黒子)】
平らで盛り上がりのない褐色のしみで紫外線の刺激によることが多い。
照射するタイプの治療・・・レーザー照射(Qヤグ)は、効果の確実性がフォトセラピーに比べて高いのですが、シール(創傷被覆剤のアブソキュア)を7日間貼る必要があります。また炎症後色素沈着といって、半年くらい黒ずんだ色、元のしみより濃い茶色になって目立つことがあります。炎症後色素沈着が目立つ場合には、トレチノイン療法の併用をお勧めしています。フォトフェイシャルファーストは、治療後の痂皮が化粧で隠れる程度の薄いもので、炎症後色素沈着も軽く、日常生活を送る上で手入れがラクです。各種ある光治療器の中で、最も安全で最も効果的な治療器です。それでもしみの種類によっては、消えないしみもありますし、回数を重ねて薄くなるだけの場合もあります。
塗るタイプの治療・・・・・トレチノイン療法といって、トレチノインとハイドロキノンをご自宅で朝夕2回塗って漂白していくという方法です。トレチノインを塗っている部分が赤くなって剥けてくるため、化粧に工夫が必要なのが欠点です。比較的安価で、漂白する場所を限定しながら使えます。場合によってはトレチノイン療法で不足する分をレーザー照射するという使い方もできます。また、レーザー照射後の炎症後色素沈着を短期間で終わらせる為にも使えます。また、肝斑がある方の日光色素斑にレーザーを照射する場合、照射の前後に補助療法として(肝斑が悪くならないように)使うことも可能です。オバジのニューダームは効果が高く、個人差が少ない治療ですが、フルフェイスの治療ですので、赤くなり乾燥し剥けるのはお顔全体になります。

【脂漏性角化症】
表面がザラザラと盛り上がっているしみです。首などにでるいぼ状のもの、お顔や体の中の盛り上がっているビロード状のものなど。肌と同じ色のものから黒いものまで、色にはかなり差があります。ウイルスによるものではありませんし、悪性の腫瘍になることもありません。炭酸ガスレーザーで隆起している部分を削るのが最短の治療です。かさぶたが1〜2週間ほどは目立ちます。黒ごまを散らしたようだと仰った方もおいででした。また、一時期ですが炎症後色素沈着といって茶色の目立つ方がたまに(小さい物で1割くらい、4mmを越すものですと半分以上)おいでになります。心配な方や炎症後色素沈着が目立つ方は照射後イオン導入やハイドロキノンを併用なさるか、トレチノイン療法をなさるほうがよいと思います。なお、治療には紫外線の少ない時期をお勧めしています。

【肝斑】
 両頬に蝶の形に出ることが多いしみです。妊娠や更年期など女性ホルモンが変動する時期に発症することが多く、紫外線にあたることで増悪します。洗顔やお化粧で摩擦することで悪化している場合もよく拝見します。 時に悪くなり時に良くなりを繰り返します。まだ分かっていない部分があって、学会研究会などでも常に議論の対象となっています。レーザーに反応せず、返って悪くなることがあります。
 一般的に以前からなされてきた治療方法に、飲み薬のトランネキサム、塗り薬のハイドロキノン、ビタミンCのイオン導入の3者併用療法というのがあります。肝斑が完全に消えるまでの効果はありませんが、日常生活に及ぼす影響が低く、全般的に色白になり、皮膚のコンディションが上がります。
そのトランネキサム、ハイドロキノン、イオン導入を続けながら、1か月に1回程度Qヤグレーザーによるレーザーピーリングをお受けになると、表面のくすみが取れ、また表皮のピーリング効果で薬の浸透性が高まり、満足度が高くなります。
 フォトフェイシャルファーストでは、プレパレーションが必要ですが、薄くする効果が高まります。
肝斑に効果が高い方法は、トレチノインとハイドロキノンを強力に使っていくやり方です。東大の吉村先生のプロトコールによるトレチノイン療法とロスのオバジによるクリームプログラム(ニューダーム)があります。この方法はご自宅で薬剤を朝夕塗るやり方で、現在、肝斑には一番効果的です。トレチノインでメラニンを追い出し、ハイドロキノンでメラノサイトがメラニンを生成するのを抑える治療法で、赤くなったり、剥けてくるのが欠点です。また紫外線を浴びると悪化する場合がありますので、注意が必要です。なかなか完全に取れませんし、維持療法は必要です。

【雀卵斑(そばかす)】
両頬に薄い平らな褐色の色があるもので、先天的になりやすい人がいます。フォトフェイシャルファーストがよい適応です。フォトを照射した後で残ったものに、レーザーをあてるとよいと思います。再発率が高い。

【遅発性太田母斑様色素斑】
メラニンが真皮という皮膚の深い部分にあるしみです。やや黒ずんだ、または灰色がかった数ミリ程度のしみが、両側の頬にたくさんあります。Qスイッチレーザーの適応があります。ただ、効果が現れるのに時間がかかり、数回の照射が必要になります。また、肝斑との区別がつきにくい場合があります。

【炎症後色素沈着(真皮メラノサイトーシス】
ニキビや擦り傷などの跡です。手術やレーザー照射、深めのピーリングなど何か処置をした場合にも起こります。通常1年くらいで色が消える場合が多いです。炎症後色素沈着が起こった場合に、紫外線にあてないこと、触らないこと(摩擦の力が皮膚にかかると色は黒ずみ、色素沈着はさらにひどくなります)の2点は重要です。その上で、治療としてはハイドロキノンやビタミンCのイオン導入が最初の選択肢になります。早い時期に治療するのが重要です。オバジまたは吉村式のトレチノイン療法が最短の治療方法です。
アトピー性皮膚炎の炎症後色素沈着など、慢性の炎症を繰り返し、基底膜が壊れ、メラニンが真皮に落ちてしまったものについての治療方法は確立したものがありません。

■治療に際してのご注意
しみ治療は前後の炎症をさましてゆく期間を合わせると半年がかりです。しみの治療をしていると、皮膚の肌理が整い、はりが出て、若返りの効果があります。毎年少しずつでも治療をしてゆくことが、若々しい美しい皮膚を保つのに一番よい方法だと思っています。
皮膚の性質は千差万別です。日々のスキンケアの方法や紫外線を浴びる量も人によりかなり違いがあります。炎症後色素沈着が強く出る人、トレチノインが効きやすい人や効きにくい人、テープや治療中の赤み乾燥が辛い人平気な人、皆さまの条件は様々です。
患者さまのご希望やしみの種類、治療の進み具合で治療方法を選択し、変更してゆきます。ご希望や心配な点は、医師やスタッフにお気軽にご相談ください。
しみは再発します。メラニンを作るメラノサイトを破壊すれば、メラニンを作ることが出来なくなってその部分の色が白く抜けてしまいます。しみの治療は、メラノサイトは温存したままメラニンを追い出します。
日焼け、乾燥、摩擦などの刺激が皮膚に加わるとメラノサイトはメラニンを作り、皮膚を黒くして皮膚を守ろうとします。皮膚が黒くなるのは、身体の中を守ろうとする働きです。再発させないケアが必要です。